近所の公園に見たことのない遊具がある。
背丈は大人の膝下ほどしかなく、この板の部分は滑るには短すぎるし、蹴って遊ぶには薄すぎるような気がする。いや、どちらもやろうとすればできるのだが、どうもしっくりくる感じがしない。
気になったのでこの遊具を作っている日都産業というメーカーのホームページを覗いてみるとカタログに掲載されていた。ちなみにメーカー名は遊具に貼ってあるシールから特定できた。
こちらが遊具の正体である。
滑るのが正解だった。
すべり台ならぬすべり板だ。圧倒的な格下感。すべり台にはなりきれない姿にすべり台から揶揄されてすべり板と呼ばれているような感じ。がんばれすべり板!
ところでこの遊具は「こつぶワールド」というシリーズの一種で他にもたくさん種類がある。どれもまぁまぁ抽象的な形をしているのだが、どうやら子どもたちに自由に遊んでほしいという意味も込めて敢えてそうなっているようだ。カタログにもそれっぽい説明が載っていた。
滑って遊ぶことが分かりにくいのもメーカーの作戦のうちということだろう。
遊び方の分かりづらさが「印象的な抽象形態」ということになるが、では「物語性のある具象形態」がなにかというと名前になっている「かえる」がそれである。
つまり、ぱっとみは分からないけれど言われてみれば確かにそれっぽいね、というモチーフが設定されているのだ。
このモチーフのチョイスがなかなかよくて、
かえる(すべり板)の隣にあったこいつはしゃくとりむし。
他にも
さんしょううお
たにし
もやし
などなど東大王で出題してもいいのではないかというなかなかの難易度のモチーフが設定されている。
特にもやしは「はっぱシリーズ」のひとつとしてラインアップされており、もはやはっぱですらないというツッコミ待ちとしか思えないモチーフになっている。
そんなモチーフの中でも特に良いのが、この「ななふし」だ。
(おともだち)である。
他の遊具をみると、ラダー遊具、乗っかり台、すべり板など括弧の中にはその遊具のジャンルが書かれているのだが、ななふしだけはおともだちなのだ。
自由に遊んでほしいとは言いつつメーカーとしては一応こういう遊び方を想定して作りましたという思いが括弧書きであるならば、メーカーはななふしを友だちとして世に送りだしたということになる。
その想いを知ってしまったからには今後ななふしを見かけることがあったら友だちとして接してあげなければいけない。今まで一度もななふしを見かけたことはないのだが、いつか必ず見つけておともだちになりたい。
画像引用先:日都産業カタログ(http://www.nitto-sg.co.jp/book39/html5m.html#page=62)